Win「Analogue: A Hate Story」Christine Love

playism.jp

欧米のインディのビジュアルノベルとして時々噂を聞いていた Christine Love の「Analogue: A Hate Story」の日本語版があることを知り、PLAYISM から購入してプレイしてみました。

テーマとしては李氏朝鮮時代のような男性優位の社会に生きる女性を描いたものなのですが、舞台を宇宙船にし、物語る手段を、AIのサポートを受けながらメインコンピュータに遺された過去のログを読んでいく、という設定にしたことで、非常に独特なプレイ感が得られています。

カナダ人の女性制作者が韓国文化圏を舞台に作ったゲームではありますが、キャラクターデザインは日本のビジュアルノベルとの親和性が高く感じます。AIとの対話もその文脈で違和感はそれほど無いはずですので、日本のADVファンにも取っつきやすいはず。ログを読んでいくという体裁上、直線的に遊んでいけないため、決して遊びやすいとは言えないのですが、見たことがない ADV の構成に興味のある方には、ぜひプレイしていただきたい一品です。

少しずつ開いていく記録ファイル+コンソールでのコマンド直接入力というスタイルは、もっと磨けばさらに面白い方向性が生まれそうですが、これだけを単体コンテンツにするのはやはりインディゲームサイズが丁度よく、これ以上大きくするのはハードル高そうですね。

同じようにコマンドラインでコマンドを入力しながら遊ぶものの、こちらはパソコン通信時代が舞台となる旧作「Digital: A Love Story」も日本語版が進行していそうな噂ですので、そちらも楽しみです。

以下、完全ネタバレのプレイ後メモ。

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逆転裁判シリーズの近作のスクリプトシステムの講演

CEDEC2015で「逆転裁判のスクリプトシステムによる実演を交えた3Dアドベンチャーの作り方」というセッションがありました。こちら、ワークフローもよく分かる素晴らしい講演でした。ニコニコ生放送での中継があり、プレミアム会員なら9月下旬までタイムシフトで閲覧できますので、ADVのシステムに興味のある方なら、ぜひ直接ご覧いただきたい。

講演内容は以下のようなメディアの記事にもなっています。

www.famitsu.com www.gamer.ne.jp

ポイントは、結局アドベンチャーゲームのスクリプトも統合開発環境的なサポートがあった方がよく、それを Excel のマクロを用いることで実現した、というところかと思います。コマンドに応じて引数をドロップダウンで選べたり、エディタ上でエラー検出をしたり。

また、途中実行時の状態を安定させるための様々なノウハウが本当に興味深かったです。 毎シーンの最後にその時の立ち絵の状態やカメラなどのグローバル状態を宣言的に書いておくことで、それが通常実行時には assert となり、途中から再開したときは、設定データとなるというのは、元自動検証屋としては何かもう一段抽象化できそうな匂いを感じてワクワクしましたw また、シーンの頭で自動的に呼ばれる共通スクリプトがあり、そこで現在のシーンに応じて所持アイテムなどのフラグを毎回再設定しているという話も面白いですね。アイテムは主人公がもっているもの、という発想ではなく、あるシーンに紐付いた小道具である、という意識の持ち方なのでしょう。デバッグはやりやすそうです。

セッションの最後の質疑応答の時間に質問した人たちの質問がいずれも聞きたいことを的確に突いていたのが面白かったです。実務者の集まりであるCEDECならでは。 コマンドをメッセージに直接埋め込めるのは、せっかくの Excel サポートが使えなくなる苦肉の策と感じましたし、ローカライズもどうするんだろうと思っていました。が、質疑でばっちり聞いてくれて、それに対してローカライズ向けに各言語のメッセージに埋め込まれたコマンドが一致しているかのチェックを走らせることが出来ると聞いたときに、その発想はなかった感が新鮮でした。

やっぱり分岐が弱いのは気になりますが、まぁ、逆転裁判自体、あんまり分岐を楽しませたいゲームではない、ということなのでしょうね。

ともあれ、Excel 最強神話がまたひとつ。本当は自動補完やエラーチェック付きの IDE として実装するのが一番筋がいいはずとは思うのですけどね……。