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ゲームシナリオのドラマ作法

ゲームシナリオのドラマ作法

読み終わったのは10日ほど前でしたが、時間が出来たので感想を。

著者の川邊一外先生は、実はまったくゲーム畑の方ではなく、松竹で脚本を書き、また脚本家の養成所で講師を続けてきたバリバリの映画畑の方です。CEDEC でご挨拶させていただいたこともありますが、まさに映画人、という風格を持った方でした。ちなみに、CEDEC では何回かシナリオに関する講座を開いていらっしゃいますが、毎回大変な人気だと聞いています。

そんなわけで、この本もゲームシナリオの文脈から出てきた作法の本、というよりは、より長い歴史のある映画やテレビドラマの流れから書かれたシナリオ作法の本、ということになります。そのため、映画シナリオの書き方を勉強したことのある方には、基礎や理論の項目にはそれほど目新しい内容はないかもしれません。環境による抑圧と主人公の貫通行動との対立がドラマである、とか、台詞の裏には必ず目的があるのだ、というような内容です。

しかし、この本の見所はもうひとつあります。それは、ドラクエ7・8やFF9・10といったビッグタイトルのシナリオ研究です。ゲーム以外のシナリオのプロフェッショナルがわざわざ超大作 RPG をプレイして、それに対する批評・考察を書いてくれるなんてそうそうあることではありません。既存のゲームシナリオにどっぷり漬かっていた人には、新しい視点を得るいい機会にはなるのではないでしょうか。もちろん、川邊先生の意見がなんでも正しいというわけではありませんので、ひとつの意見として、というくらいの気持ちで読むとよいかと思います。

ちなみに、シナリオ研究の章の大半はゲームのあらすじで埋まってしまい、批評はほんの一握りだったりします(^^; 頭からお尻までみっちり筋が書いてあるため、未プレイのドラクエの項が読めませんですよ……。ただ、FFの説明位置不適切という評価には大いに同意します。動機を理解できないうちに状況だけ目の前に持ってこられるので仕方なく処理する、というパターンになりがちで、感情移入して感動することが困難です。

また、この本の巻末にはドラマを考える際のアイデア出しの補助に使える「ドラマ・ファクトリー」と「創作秘伝ゲーム」というフォームがついています。シナリオスクールの学生さん向けのようで、実用で使うにはあまりにも枠にはめすぎなきらいはありますが、とりあえずいろいろアイデアを出そうという時には、ブレストの刺激の材料として使えるかもしれません。

↓のサイトでダウンロードもできます。使い方は書籍を参照してください。

http://www.shinkigensha.co.jp/download/game_drama/

興味深いことに、川邊先生の現在のゲームに対する問題意識と、先日読んだ Raph Koster 氏のそれとには、共通するところがあるように感じました。それは、多くのゲームの「目の前の敵を倒す」という本能的な刺激に基づいた枠組みを抜け出すことはできないか、というものです。ここで、ゲームデザイナーの Koster 氏であれば、ゲーム性のコアであるパターンに注意を向けよ、ということになるでしょう。一方、脚本家である川邊先生は、テーマを持った「ゲームドラマ」を追求することで可能性が開けるのではないか、と主張します。

ゲームでストーリー性を追うことには疑問の声もあるようですし、僕も全てのゲームにストーリーの皮を被せる必要があるとは思っていません。しかし、ゲームのひとつの大きな可能性として、インタラクティブ・ストーリーというジャンルは依然として存在していると思いますし、個人としては、この方向をもっと伸ばして行ければなぁ、と考えています。