EC2006 招待講演 by 羽生三冠
EC2006 の招待講演で、昨日王座戦を終えたばかりの羽生三冠を迎えての対談がありました。聞き手は電通大の伊藤先生。
いろいろ面白い話があり、充実した講演だったのですが、覚えている範囲でメモっておきます。自分の中に落ちてきた解釈で書いていますので、間違いなどはあるかもしれません。
- 盤面を見て、直感でいくつかの気持ちいい手を選び出し、その上でそれらを深めて探索する。
- 将棋に強くなる、ということは、その直感で選び出す手をいかに自分流に絞り込んでいけるか。
- コンピュータが指す将棋は、その気持ちいい手とはまったく違うものが来るので、意表をつかれる。
- 将棋を指すというのは、現在の局面で決まる最適の手を打つ、ということではなく、わざとあいまいさが残る局面に誘導するようにし、この手に対して相手がどう返してくるかを見て、さらに指し返す、というやり取りで成立するものである。
- みんな思いつく候補手は同じようなものだが、どの手を選ぶか、というところに各人の個性が出る。
- 対局していると、互いにどの手を選んでどの手を選ばなかったのか、ということで、今の局面やその先の展開に対する評価や気持ちが通じるような感覚はある。
- 羽生さんの幼少時代に比べ、現在はプロでも参考になるような将棋の本が多くあり、恵まれている。とても回り道したと感じている。
- 回り道したことに関して質問され: 知識に関しては回り道してよかったことはない。ただ、未知のものに対して分析していく力はついたかもしれない。
- 将棋以外のチェスのボードゲームは終盤になるほど場合の数が収束するが、将棋はそうではない。
- チェスはひきわけという選択肢が常にあるところが決定的に違う。ひきわけの状態からいかにリスクを犯して勝ちに行くか、という感覚。
- チェスでは、研究する際に思いついた手をコンピュータに入力してシミュレーションすることが当然。将棋も将来的にそうなるかもしれない。
- ただし、あまりやりすぎると本人の実力なのかコンピュータの力なのかがわからなくなるので、本人の自覚が重要。
- コンピュータ上で見た棋譜DBの内容はすぐに忘れてしまうことがある。覚えておきたいものは自分の手で並べて動かすのが大事。
- しかし、今の子の中には、コンピュータ上でしか指したことがなく、駒を目の前にすると並べられない子もいるとか。
講演後に、ミーハーにも先日出たばかりの「先を読む頭脳」に著者三名のサインをいただいてしまいました。視線トラッカーを装着した怪しい羽生さんが目印です(笑)