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CEDEC2007「アドベンチャーゲームの復権」

CEDEC も終わって、会社へのレポート書きが忙しいと思われる今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか。最近、CEDEC というキーワードで飛んでくる方が多いのです(笑)

自分は有休で行きましたのでレポートはないのですが、いくつか気になったセッションがありましたので、忘れないうちに少しずつこちらにメモしておきます。

まずは、3日目の1コマ目と2コマ目に連続して行われた「アドベンチャーゲームの復権」について。東大の情報学環の吉田先生が講師としてクレジットされていますが、ガンパレとかデモンベインとかひぐらしなどの関係者のパネラーの皆さまの発言が非常に興味深かったセッションでした。いや、もちろん吉田先生の講演も発展史を適切に俯瞰できるもので興味深いのですが、すでに何度か拝聴していますので(^^;

記事としては、以下のようなものがあります。この中では 4Gamer.net のレポートがもっとも分かりやすくて適切な内容かと思います。2コマも何をするんだろうと思っていたのですが、ふたを開けると160分では足りないほど密度の濃いセッションでした。モデレータをされていた板垣さんも体調の悪い中、本当にお疲れ様でした。

詳しい内容は各メディアの記事を読んでいただくとして、引っかかったところを軽く。

最適解でないやり方が新しい可能性に繋がっていたりする

デモンベインのシナリオライターである鋼屋ジンさんがこんなニュアンスの発言をされていました。プログラマなんていうのは、最適解を探すのが仕事のようなものなので、普段もついつい最適な方へと思考が進んでしまいますが、コンテンツ全体で考えるとその時代における最適解に皆が集まっても仕方がないんですよね。シミュレーションでもそうですが、局所最適解に落ちないように、わざとランダムに飛んでみるのも必要なことです。

仕事をしていると、これだけじゃだめだよなぁ、というポイントを感じ取ることはあるのですが、「最適解を外す」という視点での言語化が新鮮でした。

また、デモンベインに関して、相反する要素を幾重にも入れた作品である、ということを聞いて、デモンベインに感じていた何とも言えない違和感と熱気の源泉が分かったような気がしました。対立する要素を包含しようとすることによって、ダイナミックレンジが広がるんでしょうね。タイトルの作り方として、とても興味深い話を聞けました。もっとも、多くのファクターは、鋼屋さん自身の作家性であろうとは思うのですが。

ひぐらしは、周辺のコミュニティも含めてコンテンツだった

T/O (Title Only)

……というのもなんなので。コミュニティができた流れの説明として、「正答率1%」という挑戦的なコピーをまず付けて、コアユーザを煽り、その後、語るよりはプレイしてもらった方が早い、という形で周りに布教する、という流れを作った、というのは興味深いですね。同人ソフトで安かった(最初は無料でダウンロードもできていた?)というのも、要素の一つだったのでしょう。もっとも、タダならなんでもいいというわけではもちろんなくて、人に話したいと思わせるだけの質が必要条件ですけどね。

アドベンチャーゲームは過渡期に咲く徒花

今はベックにいらっしゃる芝村裕吏さんのおっしゃった、非常に説得力のあるお言葉です。芝村さんというと、ガンパレの人としての通りのほうがいいですね。

アドベンチャーゲームは、RPG やアクションゲームなどに比べて、小さなチームで低予算で作れることが、商品として見た際の大きな特徴です。また、実行環境にそれほどのスペックを要求しない、という特徴もあります。実は、これらの条件にもっと適合するのはテトリスを代表とするパズルゲームなのですが、アドベンチャーゲームは開発規模の小ささに比して、コンテンツとしての存在感がある(少なくともマルチメディア展開の核となりうる程度には)というのが特徴でしょう。コストパフォーマンスが良いのですよね。

アドベンチャーゲームの生存戦略

芝村さんのまとめでは、アドベンチャーゲームが一時的に勢いをつける市場は:

  1. 開発の規模がさして大きくなく
  2. 発展途上で決定打にかける

といった条件がそろった場であるということでした。市場が発達していくにつれ、付いた予算で徐々にアドベンチャーゲームに別のゲームシステムが付与されていき、最終的に物語性がある何かのゲーム、といった形に変質していきます。これは、ディスクシステムにせよ、PCゲームにせよ、的確な分析であろうと思います。

細かく言えば、(1)パズルやアクションパズルゲームが発生→(データ容量が一定量を越える)→(2)コンテンツとしてアドベンチャーゲームが盛んに→(市場が成熟し、開発が大規模化する)→(3)RPG や 3D アクションなどの大作ゲーム、ないしはそのプラットフォームの最適なジャンルに成熟 という流れかと考えていますが、携帯電話やDSがまさに今、アドベンチャーゲームに可能性のある市場となっているのは間違いないことでしょう。もっとも、DS はコアゲーマ層は大作志向に移りつつあるのかもしれませんが。

芝村さんは、この通過点という立ち位置から抜け出ることがあるとすれば、アドベンチャーゲームが質的転換を果たした場合ではないか、と議論を進められていました。例えばの話で、アドベンチャーゲームの発展史で切り捨てられてきたテキストによる入力を復活させることに言及していらっしゃって、興味深かったですね。

アドベンチャーゲームのゲーム性

僕自身の感覚では、アドベンチャーゲームに予算が付くと、アクション要素やシミュレーションゲーム要素で「ゲーム性」の付与を行う、という流れにそもそも違和感があります。アドベンチャーゲームには、アドベンチャーゲームとしてのゲーム性があると考えているからです。それまでの話から今後の展開を予測し、選択を行うことでその正否を得るという楽しみ。そして、僕がもっとも重要だと考えているゲーム性は、自分の行動(選択)で、世界(物語の流れ)を左右し、その結果新たな行動が誘発されるというインタラクティビティです。

おそらく、アクションゲームの持つ身体感覚と直結したゲーム性や、明示されたルールの下で思考するシミュレーションゲームのゲーム性とは異なるために、そこにゲーム性があると認識していない方が多いのではないかと思ったりしているのですが、どうなのでしょうね。

もちろん、文章を読む、ということだけを繰り返すコンテンツを受容できる層は少ないので、彼らが飽きないようにアクションなどの別のファクターを追加する、という考えがあることは重々承知しています。まぁ、よくある話では、RPG ファンの中で、物語が好きな人と、戦闘が好きな人はいったいどのくらいの割合なのか、というネタです。(物語好きには)意外なことに、戦闘システムが良ければ、物語なんてどうでもいい、という RPG ファンも多かったりするんですよね。実際、それぞれの属性のユーザ層がどのくらい居るんでしょうね。興味がありますが、どこかにデータがあるんでしょうか。

確かに販売本数だけを見ると、アドベンチャーゲームはどんなに頑張っても数十万本程度の市場、ということになってはしまいます。しかし、インタラクティブなストーリーテリングの持つゲーム性にこだわり続けた先に、きっとブレイクスルーが待っている、と自分では信じているわけですが、はたして……。

アドベンチャーゲームの進化の道筋

閑話休題。芝村さんの話に戻りますと、提案されたテキスト自由入力の復活というのも一つの面白い試みになるのではないかと思いますし、そもそもガンパレというゲームシステムも物語を紡ぐゲームの新しい姿を模索する非常に先鋭的な試みの一つだったのでしょう。テキスト自由入力のゲームシステム的な意味としては、選択肢の総数を見せない、ということにあるかと思います。従来型のアドベンチャーゲームのように選択肢を見せる形にすると、総当たりができてしまいますので、仮想世界との繋がりが非常に人工的なんですよね。与えられた枠内で行動させられているという感覚が強くなり、自分で考えて行動を決定している、という実感を得ることが難しくなります。

その解決策としては、いかにアナログ的な入力をさせるか、ということになるわけですが、テキスト自由入力は僕には先鋭的過ぎるように感じられてしまうので、自分なら、5W1Hで選択肢の組み合わせを非常に多く用意するという形にしたほうが、まだ安定したソリューションのように思ってしまいます。たとえ選択肢であっても、それが一定数を超えれば、プレイヤーにとっては無限の可能性と同義になると考えているからです。まぁ、安定したソリューションとはいったものの、それでもデバッグどうするんだよ、とかいった話はあるわけですが(^^;

芝村さん

そのほかの話しぶりの端々を拝聴しても、芝村さんは物語を紡ぐゲームというジャンルについて、本当にきちんとした考えをもってらっしゃるんだと感じさせられた講演でした。懇親会ではしきりに、皆が言わないから自分だけ厳しめなことを言ってしまって……とおっしゃってましたが、お話しされた内容はまったくもって正論だと思いますし、むしろ、現状を的確に捉えることで、ビジネスチャンスを感じた人も多かったのではないかと思います。

すぐ後に講演があった川邊先生も、芝村さんのお話に深く得心がいかれたようで、さっそくその講演で、携帯電話などでアドベンチャーゲームはチャンスがある、だからしっかりとしたドラマを入れた作品を作っていく必要があるのだ、と力説されてらっしゃいました。それだけ、説得力のある講演だったかと思います。う〜ん、今後も芝村さんが講演される機会があるなら、要チェックですね。