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DS「DS西村京太郎サスペンス 新探偵シリーズ『京都・熱海・絶海の孤島 殺意の罠』」テクモ

ゲーム

DS西村京太郎サスペンス 新探偵シリーズ「京都・熱海・絶海の孤島 殺意の罠」

2時間サスペンスドラマをゲーム化してみよう、というコンセプトのアドベンチャーゲームです。西村京太郎という冠が付いてはいるものの、原作などがあるわけではなく、あくまでも監修という位置づけとのこと。全部で3つのエピソードからなっています。京都と熱海と絶海の孤島ですね。タイトル通りで分かりやすい。また、50問のなかなか歯ごたえのあるショートミステリー集も収録されています。

第一印象は、とても丁寧に作られている、というものでした。アドベンチャーゲームが初めての人でもストレスに感じないような工夫もされています。上下2画面を使い、上に全景を、下に調査可能な場所を漫画のコマ割りのような分け方で拡大表示する、という「カットパネルシステム」も2画面を活かしていていいですね。

登場人物は、キャラゲーのそれほど荒唐無稽でもなく、かといって過度なリアル路線でもなく、幅広いターゲットに受け入れてもらいやすいものになっています。物語も、似たような感じですね。ミステリを楽しませることがメインですので、ドラマはあまり期待しない方がいいかもしれません。

トリックもそれほど奇抜なものはありませんが、時刻表を使った推理があるのはさすが2時間サスペンスです。奇抜なものを楽しむのではなく、ごく普通のミステリ作品を自分の手で推理してみたい、くらいの気持ちで遊ぶのであれば、よいタイトルなのではないかと思います。

特徴

初心者への配慮

初めてアドベンチャーゲームを遊ぶ人への配慮として、ゲームのプレイ手順なども含めた丁寧なチュートリアルが付いているのが印象的でした。最近のアドベンチャーゲームは、プレイヤーの前提知識を前提にいきなり始まるものばかりですので、こういった原点に戻ったタイトルも必要ですよね。

また、場所移動式のアドベンチャーゲームではあるのですが、その場所で調べることが終わった際には次への移動を促すメッセージが出て、場所移動画面で行かないと行けない場所には印が付く、というサポートをすることで、アドベンチャーゲームでありがちな、無駄な調査を繰り返す、というストレスを軽減しています。

カットパネルシステム

今作の調査パートの特徴が、上画面にその場面の全景を表示して、下画面には、調査対象となるものや、話しかけられる人などを「カットパネル」として拡大表示して配置している、というスタイルです。片方の画面をもてあましているタイトルが多い中、DSならではの見せ方ができており、好印象でした。

部屋全体がタッチできると、どうしても関係のないところを調べさせられることが多くなり、辛い作業となりがちです。その点、注目点だけアップになっていれば、より濃度の濃いプレイができるわけです。

DS のアドベンチャーゲームのスタンダードスタイルになってもおかしくないと感じました。もっとも、場面ごとに2画面分の素材を作る必要があり、デザイナーの仕事が2倍以上になりますので、そういう余力がないと無理ですが……。ちなみに、本作のスタッフリストをみると、デザイナーさんは13名もいらっしゃいました。

贅沢を言えば、せっかく部分的に拡大表示になっていたのですから、もう少しタッチしながら細かいものを探し出す、といった感触があるとよかったかな、と。もっとも、初心者でもプレイしやすく、ということとのトレードオフでもあるので難しいところですね。

コンシューマ屋さんの作ったアドベンチャーゲーム

また、細かいところではありますが、カットパネルの出入りの仕方を始めとした、操作に対する反応のリズムは、コンシューマ屋さんが作ったんだなぁ、と感じさせられる気持ちいいさわり心地となっております。ゲームニクス的には、ここ重要。

ただ、仕様から落ちていたのか、意図的なのか、読み戻しもスキップもないのは辛いです……。ここらへんは、PCのアドベンチャーゲームの文化で育った、文章を読ませるゲームならではの機能ですね。

丁寧に作られているスクリプト

あまり気付いている人が居ないかもしれませんが、この作品、スクリプトがかなり丁寧に作られています。特に、推理パートで途中で中断できるのですが、再開すると中断したところまで推理の概要を説明した上で、中断したところから再開できます。普通、最初からやり直しで済ませるところですが、この丁寧さにはびっくりしました。

おそらく、シナリオのスクリプトを組んだ方がよほど丁寧な仕事を心がけていたのでしょうね。……ディレクターが深く考えずにリクエストを出してきたので、黙々と対応しただけかもしれないのですが(汗)

ゲームシステム

場所を移動しながら、タッチパネルを使って調査を行う、という形式です。調査していると証拠を入手することができ、推理パートではその証拠を選んでいく、という形式にはなっていますが、実際には必要な証拠がそろわないと先に進みませんし、推理パートでも証拠が5つに絞られて表示されますので、事実上、推理パートは5択から選ぶだけのものとなっています。

また、推理パートでは、少し変わった試みとして、証言の中からおかしな部分をマークして選択したり、どうやって電車を乗り継いだのかを示したり、といった推理のさせ方をする部分もあります。なお、50問のショートミステリー集では、これらの推理方法を最大限に活用した問題がならんでいます。せっかく作った入力方式を存分に再活用している感じですね。

シナリオ構造

どちらを先に調査するかといったレベルの違いはありますが、基本的には完全に一本道のシナリオです。

シーンの幕間には、ストーリーテラーの「京太郎くん」が出てきていろいろ語ってくれますが、正直なところ、不要に感じました。まだ各章の導入部に出てくるくらいなら、導入の役割として理解できるのですが、これだけ頻繁に間で割り込まれると没入感が台無しです。どんな機能を持たせたかったのかがいまいち分かりません……。文章を読むだけだと疲れるので、息抜きが必要、という配慮なのでしょうか。

ストーリーへの感想など

一応、主人公の一新の父親の殺人事件の真相の究明、というのがバックグラウンドの話として展開されてはいるのですが、フレーバー程度なのかなぁ、という印象を受けました。登場人物にも表と裏くらいしかない感じで、それほど深みもなく。熱海はまだドラマとしても面白かったのかもしれませんが、京都と孤島は微妙なところ。

もっとも、2時間サスペンスだと思えば、描ける分量としてもこのくらいが適正量だったのではないかと思います。

West Village というショートミステリー集は、ボリュームもたっぷりで内容もバリエーションに富み、十分に楽しむことができました。全体としては、お得な一本だったのではないでしょうか。