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PS2「奈落の城 一柳和、2度目の受難」日本一ソフトウェア/FOG

ゲーム

奈落の城 一柳和、2度目の受難 (「奈落の城ドラマCD 一柳和、混迷の序章」同梱)

風邪を引き込んでしまったようで、この週末は自宅でけほけほ言っておりました。何とか体調も落ち着いてきましたので、忘れないうちに手短に感想をメモ。

「雨格子の館」の続編となる「奈落の城」です。素直に2と付けずに、「一柳和、2度目の受難」という副題で2作目であることを表現しているのが面白いですね。続編ではありますが、前作を知らなくても全く問題なく楽しめるかと思います。1週間助けが来ないクローズドサークル環境で見立て殺人が……というと、概要が前作と同じになってしまいますか。今作も超常パワーは基本的には存在しない(というと異論もあるかもしれませんが)純粋なミステリ作品でした。

感想は……2作目を急ぎすぎたような印象、でしょうか。もう少しじっくり練って作ってもよかったんじゃないかなぁ、と感じてしまいました。ボリュームは増えてはいるんですが、厚みが増したかと言われると疑問が残ります。まだ全ルートはクリアしていないのですが、とりあえず全ての真相を分かったのでもういいか、と思ってしまうような構成でした。

前作の要素は色濃く受け継いでいますので、前作が楽しかった方は遊んで後悔はしないかと思います。

以下、いつものようにネタバレ満載です。

前作との相違点

前作の感想 の時にキーワードシステムなどの特徴は詳しく書きましたので、前作との相違点について軽くまとめておきます。

EASY MODE

オプションで EASY MODE を選べるようになりました。EASY MODE を ON にすると、行動ゲージの減りが少なくなり、自由行動時間に取れる行動が増えるという恩恵、および、重要な会話でヒント音が鳴るようになります。今回、かなり分かりにくい分岐条件があったりしますので、用意してもらってよかったと思うことしきり。個人的には、こっちがデフォルトでいいんじゃないかと思ったりも……。

会話回数

前作では、(確か)2〜4回程度キーワードを聞くとそれ以上は会話できなくなりました。回数は好感度によって変動します。しかし、いったん別の場所に行って戻ってくることでまた会話が出来ましたので、聞き込んでは他の場所に行って、という無駄な手順を踏む必要がありました。

今作では、別の場所に行っても会話回数が回復しないのですが、その代わりに会話回数が2〜10回と上限が大きく増え、普通に第一印象チェックをクリアしていれば5回程度は聞き込めるようになっています。キーワードの個数も多いですし、このくらいが適正な聞き込み回数であるという印象を受けました。あ、でも、EASY MODE を OFF にすると前回並なのかもしれません……。

アリバイ表

前作では事件ごとにアリバイ表を作る必要があり、たいへんだったのですが、今作ではアリバイ表は一種類のみ、しかも特定のルートでしか使用しないようです。アリバイ表を作るのが醍醐味だった部分もありますので、少し残念な気も……。ちなみに今作は1分単位のアリバイ表です。

なお、相変わらず、証言は曖昧なのに、判定では微妙なずれも許されないという非情な仕様です。本質ではない部分で総当たりが発生するのはゲームプレイに何も寄与しないんじゃないかとちょっぴり憤ったりするわけですが、今回はアリバイ表を使わないルートでも、結構近いとか全然違うといったヒントを出してくれるのは進歩ですね。何周かしているうちに自然と正しいアリバイ表を作れるようになりそうです。

リドル

今回は謎かけが当社比何倍という感じで増えましたね。今回は時間に余裕がなかったので攻略サイトを頼ってしまいましたが、ゲーム開始時に3種類から選ばれる謎は、当たり所が悪いとハマりかねない難易度の高さだと感じました。特にラストの時計の謎は、いくらデータベースの補助があるとはいえ、文面のどの部分が種類・短針・長針をさしているのかを当てはめるのがかなりたいへんそうです。攻略サイトを頼らないプレイヤーの皆さんは無事にクリアできているのでしょうか……。

もっとも、最近はプレイヤーのターゲットによっては、攻略サイトを使ってもらえることを前提に難易度デザインするということもあるのかもしれないのですが。攻略サイトの存在とリドルの難易度デザインは難しい課題です。

移動画面の 3D 化

移動画面が基本は3Dとなり、見取り図からの選択はショートカットという位置づけになりました。正直、動きにくいし、3D酔いはするしで、辛いことばかりです……。今回は、3D で歩き回ることも大事な要素であるというのは重々分かるのですが、せめてデフォルトを見取り図移動にしていただきたかった。

3D が好きな人と、ADV が好きな人の相関ってどんなものなんでしょうね。自分が 3D が苦手で ADV 好きなので、負の相関があると勝手に思いこんでいるのですけれど。

シナリオフローチャート

タイトル画面のメニューから、シナリオフローチャートを見ることができる機能が付きました。キャラクターごとの分岐が付いたためだと思われます。どの時点でいくつに分岐するかが一目で分かるのは、闇雲に分岐点を探す必要がなくなりますので、親切ですね。

無くなったもの

前作と比べて無くなったものとしては、まず書庫が挙げられます。その代わりに、データベースが追加になりました。ゲーム内の謎かけに対するヒントという機能は変わっていないものの、遊び的な要素が少なくなってしまい、少し残念でした。

また、ゲームのシークエンスから日々の殺人阻止という要素がかなり薄れてしまったのも残念でした。話の筋が異なりますので仕方ない部分ではあるのですが、他の要素がそのまんまであるがゆえに、改悪感を感じてしまった部分でもあります。前作は、毎日、殺人阻止という目的があって、その結果が翌日に分かる、という短いフィードバックのサイクルがあったために、他の ADV にはないメリハリが効いていたのですが、今作は普通の(?)ADV になってしまいました。

シナリオ構造

基本的には前作と一緒ですが、今回は前半2日の好感度に応じて、各キャラクターごと全6種類にシナリオが分岐するというのが大きく異なります。ただし、特定のシナリオをクリアしないと選択されないキャラクターがおり、最低でも3周しないとクリアすることはできません。

選択に失敗しても必ずしも即座にゲームオーバーにならずに、ただ登場人物が殺されてしまうだけ、という懐の深さも前作と同じです。ただ、前作よりも即死のケースが増えたような気はします。

3周目において、真のエンディングに行くためにはそれまでの周回でたどった話の筋を折るような行動をとり続ける必要がある、という選択肢の選ばせ方はよかったです。全部で3周させ、周回ごとに少しずつ事件の全貌が分かるという構成自体は妥当なものだったように思えます。

全体的な感想

正直な感想としましては、キャラクターごと分岐は不要かと思います。キャラゲーでキャラ分岐があるのは、キャラクターごとに全く異なるストーリーが展開されることが前提です。一方、今作は、ストーリーの骨格となるのは城内で起こる事件であって、事実関係は全ての分岐で同じです。同じ料理を少し盛りつけを変えただけで6度も食べないといけないというのは、かなり辛いです……。

もしかしたら、前作の反省として、プレイヤーのニーズに応じて脇役ともラブラブな感じになれるような分岐を作っておかないと、といった配慮がなされてしまったりしたのでしょうか。お気持ちは分からないこともないですが、ひとつの分岐内でパートナーキャラを変えるくらいで実現して欲しかったところです。前作の、エンディング後の手紙が来る相手が好感度で変わる、くらいが結構いい落としどころだと感じていたんですけれど。

また、いくつか本質的ではない部分で不親切だったところがあったのが気になります。思いついた範囲で挙げると、時計の時間を動かすためには上の針を移動させる必要があるという仕様や、彫刻刀がほぼノーヒントの上に細身のグラスにしか見えないこと、それまではそんなことはほぼ無いのに終盤に「子どもの頃」のキーワードを入手する時だけ同じ場所を3度調べる必要があること、などなど。ラストだけ時計の針を逆にしないといけないと気づいた時には、いらいらは最高潮となりました。あなたがプレイヤーに解いてもらいたい謎は、そんなものなんですか?と問いただしたい気分になります。

不確定なものの上に、不確定なものを重ねてしまうと、不確定度は一気に増します。0.2×0.2=0.04なのです。皆でわいわい悩んでもらいたい場合など、意図的に不確定度を増したいときは別ですが、シングルユーザに普通に解いてもらいたい時には、何も情報を持っていないプレイヤーの気持ちになって不確定度をうまくコントロールしてもらえると嬉しいですよね。

今作であれば、まだ時計を動かせるのか確信がないプレイヤーは、しばらく時計をいじって動かし方が分からなければ、まだ何か条件が足りないんだと諦めてしまうでしょう。そこを詰まらせるのが意図したゲームデザインなのか、が問題となります。意図して詰まらせてやったんだということであれば、仕方のないことなのですが。

プログラムに関しての感想としては、もう少しさくさく動くことに注力してもらえると嬉しいですね。既読スキップがせっかくあるのに、毎回 SELECT を2回押しという仕様も不思議です。どこかのボタンに固定で割り当ててくれれば、プレイ中のイライラがずいぶん解消されたと思うのですが。また、リストからキーワードを選ばせるときに、普通の十字ボタンでの選択ではなく、なぜかマウスカーソル的なものが表示されてキーワードを選ばないといけないという仕様もただただ不思議でした。なぜ?

しかし、セーブごとにメッセージ履歴を数千行も保持するという仕様は素晴らしいと思います。このシリーズ以外でこんな仕様は見たことがありません。選択肢部分をロードしても、すぐに読み返して前後関係を把握できるのは便利ですね。

また、純粋にシナリオだけ眺めてみた感想ですが、水準以上の出来ではあると思うものの、せっかく××××という少々現実離れしたタネを使うことを解禁したんですから、もう少しあっと驚く尖った展開が出来たんじゃないかとも感じました。もっとも、その手の荒唐無稽な(?)物語に慣れきってしまったために感性が鈍っているだけで、今回のでも十分に突飛な物語なのかもしれませんね。本格推理ものに載るストーリーとしては十分にドラマチックだったかもしれません。

と、まぁ、いろいろ不満ばかりの感想となってしまいましたが、前作をプレイして期待が高かったことの裏返しなんでしょうね。「顧客満足」とは、実際に得た価値から事前に感じていた期待を引いたものだ、という定義が思い出されます。とはいえ、FOG が水準以上のアドベンチャーゲームを作り出しているブランドなのは間違いないところです。次回作も楽しみにしております〜。