DS「タイムホロウ 奪われた過去を求めて」コナミ

タイムホロウ 奪われた過去を求めて

ルクス・ペインとの違いが分からないと巷で噂のタイムホロウもクリアしました。正確には計っていませんが、クリア時間は8時間程度でしょうか。ボリュームは軽めではあるものの、後半はぐいぐいと引きずられるように一気にプレイしてしまいました。

歩郎がある朝起きてみると、昨晩までは一緒に暮らしていた両親が「いなかった」という歴史に書き換えられていた。同時に、時空間を穿つ不思議なペン「ホロウペン」を手に入れる。「ホロウペン」を頼りに、奪われた過去を取り戻す戦いが始まる。といった感じの導入のアドベンチャーゲームです。ぐりぐり過去を書き換えます。うまく行かないことも多いんですが。

中盤からの盛り上がりといい、ラストのうまく閉じた感じの構成といい、ライトな時間ものの作品の中では、かなりの良作だったと思います。微妙にパラドックスを解消し切れていない気がしますが、ノリで読めてしまうくらい後半の勢いはあったのではないでしょうか。

作りも丁寧ですし、ストーリーの要所要所でボイス付きのアニメーションが挟まってキャラクターイメージを補ってくれますし、時間操作ものが好きで軽めのお話が読みたいならばオススメです。少なくとも、こんな現実は認めない!修正してやる!という危険思想は体験できます(笑)

以下、ネタバレ含む。

特徴

フラッシュバックとディギング

ホロウペンで空間に円を描くと、時間は停止して、過去への穴が空きます。これをディギングと呼びます。

このディギングはどこでもできるわけではなく、フラッシュバックという過去の場面のイメージにある場所と時間にしか繋ぐことができません。フラッシュバックは、誰かが歴史を改変した瞬間に、改変に関係するイメージが歩郎の頭にすり込まれます。

また、フラッシュバックをディギングに使用するには、そのフラッシュバックの日時と場所の情報が揃う必要があります。

というように、過去への干渉に制約条件が付いていることにより、任意の過去の操作を防ぎ、シナリオとして成立させているのがポイントです。フラッシュバックの情報を集めるという行動指針もできますし、一石二鳥。

ちなみに、ディギングは各章ごとに回数制限が付いており、使い果たすとゲームオーバーですが、町中をランダムにうろついている猫を探すことで何回でも回復させることができるという親切仕様です。取説も隅から隅まで読むと、この回復の件も含めて、プレイテストで引っかかったとおぼしき箇所を片っ端からフォローする丁寧な FAQ が付いており、やっぱり親切でした。対象として広い層を想定しているんでしょうね。

シナリオ構成

基本的には課題をクリアしないと次に進めないという形の一本道シナリオです。微妙に分岐が存在してる節があるのですが、何に影響しているのかが不明です……。

と思って攻略サイトを見てみたら、本筋に全く関係ないところで意外とミドルレンジ分岐が多くて吹きました。うわ。頑張ってる。第2章にてディギングで眼鏡を取ると、第4章で返すまでの間の立ち絵が全て眼鏡なしになる隠しイベントって、いったいどんなこだわりの成果……。ちなみに、普通に話を進めている分にはそんなものの存在には全く気付きません(笑)

また、クリア後にセーブさせるのに、ギャラリーモードも何もないのを不審に思っていたところ、見事に2周目の頭に真EDへの分岐が存在していました。本筋にむやみに分岐を入れないという制約の中で、想定以上にシナリオに凝っていますね。評価が+1です(謎)ただ、ギャラリーもクリアリストも何もないと、真EDがまだあるということに気づけませんね。

プロローグとエピローグも合わせると全部で8章の構成です。マップ画面での場所選択があり、それぞれの場所で固定のイベントが発生します。一部、発生場所がランダムなイベントもありますが……。アイテムというシステムも、アイテムを使用するというコマンドもありますが、ほぼシナリオが一本道のため、それが分岐を増やすことはほとんどありません。

全体的な感想

全体的に、アドベンチャーゲーム初心者でも詰まらずにクリアできることに気を配っている印象はありました。分岐が積極的に存在しないことや、試行錯誤をしないといけないような課題設定がほとんどないことなどからも伺えます。

そのため、インタラクティビティはあまりなく、自分の試行錯誤でようやく過去を望む形に変えられた!というゲームならではの達成感は低めになってしまっています。

一本道シナリオなりに、ストーリーでの試行錯誤の演出はあるんですが、シナリオの指示に従って言われたことをやっている感じにどうしてもなってしまうんですよね。でも、過去改変のシナリオを初めて遊ぶユーザさんにとっては楽しいゲームになっているのではないかと思いました。

シナリオとしては、過去を改変できる者同士の戦いを描いている、というだけで十分に特徴的かと思います。ただ、プレイヤーのわかりやすさを優先したためか、脳汁が出るほどの頭脳戦という感じの展開にならず、わりと場当たり的に改変し合っているという印象になったのが少し残念。

ただ、終盤の5章にて、いくら過去を修正しても修正しても、あの手この手で状況が悪くさせられるというストレスの与え方と、それからの開放という流れはよくできていたのではないかと感じました。

欲を言うなら、5章から6章、エピローグにかけて、もう少しテンポよく話が進むと、もっとすっきりしたような気もします。でも、個人の好みかもしれませんね。まったりとしたクロージングが好きな人もいるでしょうし。

また、恋愛的な要素は、取説にて丁寧にも「主人公に好意を持つ少女たち」として紹介されている和織・久里といったキャラとのラブコメ的な展開があるのかと思っていました。しかし、真EDまで含めてクリアすると、少年向け作品にあるまじき、他人の恋人にほんのり片思い、でも相手の幸せのために身をひきます、という大人なシナリオでびっくり。

しかし、最後は本当に保がああするしか解決法が無かったのか、とか、過去に戻った人が戻った時点まで来てしまうと消えるという理屈が分からない、とか、結末に完全に納得できているわけではなかったりします。というか、保おじさんがかわいそすぎます……。

ちなみに、シナリオの河野純子さんは、「幻想水滸伝」や「幻想水滸伝IV」のシナリオの人だそうです。もしかして、ホロウペンは真の紋章の力……(違)でも、シナリオに感じた絶妙な男性・女性向けのバランスの源は分かった気がします。

なにはともあれ、ゲーム以外のメディアに展開しても面白いシナリオだと思いますので、メディア展開でもないかこっそり期待しています。AIC ASTA 制作と思しきゲーム内アニメも十分なクォリティでした。

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