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PS2「12RIVEN -the ψcliminal of integral-」サイバーフロント/KID

12Riven -the ψcliminal of integral- (サウンドトラック同梱版)

Never7, Ever17, Remember11 の流れをくむ、打越鋼太郎氏シナリオのアドベンチャーゲームの新作です。KID が潰れたことで一時期は発売が危ぶまれていましたが、サイバーフロント発売ということで、なんとかなった一作です。と、ここまでは前回のコピペ。初週は1万本程度だったみたいですね。厳しいですね……。

シナリオ分岐は3つだけですので、土日くらいですぐに終わりました。分岐条件が謎なのですが、どうしてもうまく分岐できなければ攻略サイトでも参考に。僕はさんざん試行錯誤したあげく、皆に嫌われそうな選択肢を選びつづけてみたら、ようやく最終シナリオに入れました(^^;

感想は……打越氏のファンなら、という感じでしょうか。伏線や伏線に見せかけたミスリード、言葉遊びやどんでん返しなど、シナリオに仕掛けは一杯詰まっています。ただ、油断していると様々な登場人物がよってたかって、識閾下がどうの、クオリアがどうの、とややこしいことを言い始めるので、そういうのが好きじゃないと辛いかもしれません。今回は特に粘っこく語ります。

世界設定の説得力を上げるには説明過多なのは仕方のないところもあります。しかし、理論武装する割には矛盾だらけ(に見える)設定なので、SF魂も揺さぶられず、個人的には残念。理屈っぽさをもう少し減らして、人間ドラマ中心に見せてくれればもっと楽しめたのではないかと思うのですが……。

もっとも、心の哲学や認知科学の入門 e-learning 教材だと考えたら、十分な出来ではなかろうかと思います。感情を揺さぶって記憶を深める。これぞシリアスゲーム。

以下、いつものようにネタバレです。

特徴

まぁ、いつものようなもの、という感じではあります。典型的なノベルゲームですね。

デュアルサイトシステム?

シナリオ構成の特徴として、二人の主人公の視点でのシーンが交互に挿入される、という点があります。この交わりそうで交わらない二人のシナリオが互いにどう影響し合っているのか、を見極めることがこのゲームのシナリオを楽しむ一つの大きなポイントでしょう。

また、主人公が切り替わると、同時にキャラクターデザイナーも切り替わってしまうというのがメタ的に面白い点です。原画家が変わったと言われれば納得してしまえる程度の、違和感のなさではありますが。

ただ、そういうメタな差異をトリックに使うのは果たしてどうなのよ、とは思いました(笑)。「練丸と鳴海とが同じ対象を見ていたとしても、自我が受け取っているイメージが同じとは限らない」ということを表現したんだ、と主張されたらもう何も言えないんですが、うーむ。

まぁ、いつの時代も新しい試みには批判はつきものなわけです。犯人は語り手でした、みたいな。

シナリオ構成

典型的なノベルゲームです。中盤に大きく2本の分岐があり、両者をクリアすることで3本目の分岐が現れます。

バッドエンドへの分岐は、好感度不足と思われるロングレンジなものと、選択肢ミスによるショートレンジの一撃死など多様です。3周で終わってしまったため、分岐条件を深く追いかけ切れていません……。

分岐3本というのは、複数回プレイを前提としたシナリオ重視タイプのノベルゲームを構成するために必要な最低限度のシナリオ構成です。そういったミニマムな構成でも、手堅くまとまっているシナリオという印象を受けました。

システム

システムとしても、典型的なノベルゲームで特筆すべき事はありません。アイテムもなし、キーワード類もなし、ツッコミ的な要素も無し。ただ選択肢を選ぶのみです。

しかしながら、エンジンのプレイアビリティは、さすが KID と思わせる、コンシューマでは最高レベルの完成度です。We/Are*の感想などで語っていますので詳細は割愛しますが、今作では、ロード画面でデータを選択するときに、そのデータはどんな選択肢の場面かをロード前にプレビューできる機能が追加されており、感動しました。

ただ、奈落の城のプレイ直後だったこともあってか、ロードするとメッセージ履歴が消えてしまうのは(他のシステムでは当然なのですが)残念に感じてしまいました。奈落の城の履歴保存具合は異常です。

全体的な感想

上でも述べましたが、少し理屈が先行しすぎていて、それが却って作品世界への没入を損ねてしまっている気がしました。最初に練丸に対して行われた説明は余りにも胡散臭かったので、途中でどんでんがえってくれて「おお、案の定」と喜んでいたのですが、どんでんがえった先も相変わらずの胡散臭さでがっかり。

どうしてこんなに胡散臭く感じてしまったのかと考えると、理屈を語りすぎたから、が大きな原因な気がします。もうどこから突っ込んでいいのかわからないのですが……。

仮に識閾下と自我の情報伝達遅延を1日にのばしたとして、自我が得られる情報は識閾下がいた場所の情報に限られるはずなのに、どうしてA世界において識閾下と違う場所で違う行動を取れるの?とか、情報伝達遅延が12分と1日の人が同じA世界を共有しているなら、なぜ0.5秒の普通の人たちもA世界を共有していないの?その差異はどこにあるの?とか、百歩譲って、自我が観測した事象が、識閾下の経験した歴史を上書きするという設定を受け入れたとしても、自分が変えた歴史しか反映されないって、その曖昧な基準は何?例えば、AさんがB君を振ったのでB君が自爆テロに走ったとして、歴史を改変したのはAさんとB君どっちなのよ、とか、もやもやは溜まっていくばかり。

これらの設定も、この世界ではそういうものなんだ、とさらっと断言してもらえれば、そうなんだ、と納得して、その設定の上で繰り広げられるドラマに没入できるわけです。しかし、下手に理屈をこねられると、アラがどうしても目につきますし、しかもそのアラはもしかしたら伏線ではないか、なんて余計な心配もしながら物語に付き合わないといけなくなりますので、没入感がかなり損なわれます。

YU-NO のように、納得しないといけない超設定(宝玉のスーパーパワーで時空間上の特定地点に戻れるのだ!)の上で、納得できる理論(プレイヤーの選択次第で世界は分岐していく)が提示されるほうが、同じ理屈っぽい話でも納得度が違います。

一方、キャラクターに魅力があったかといわれると……うーん、正直なところ、思い入れが出来るほどエピソードを積み重ねられなかった感がありますね。いつもであれば省略しない移動シーンが、ときどき大胆に数行にまとめられていたりもしましたので、ボリュームに対して何らかの制約があったのだとは思うのですが。

そんな中でもまだ鳴海と真琴のエピソードはまとまっていたのですが、ミュウは内面の変化がよく分からなく、物語の前後で何か成長があったのかも不明です。ストーリーを追う限りでは、勝手に怒って勝手に行動して勝手に仲直りした、としか見えず、頭の中を???が飛び交うキャラクターでした。あとで、不安だったんだと一言で説明してはくれるのですが……。さらに、マイナに至っては、最終シナリオの途中と最後の最後でちょっとだけフォローされて終わりという不遇。

時間ネタは好きなテーマなだけに、もう少しドラマに重点を置いて、人を描いてくれればよかったのに、と残念です。マイナのエピソードなんて、もっとしっかり描けばいろいろな料理ができたと思うのですが……。

まぁ、リソースが制約された中で、無事に作品として完成に持って行けました、という雰囲気が全体的ににじみ出ていますので、諸般の事情がいろいろあったのではないかと想像されます。ここまで作品として体裁の整った状態で世に出てくれただけ感謝するべきなのかもしれませんね。