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DS「すばらしきこのせかい」スクウェアエニックス

すばらしきこのせかい

去年の夏に発売されたスクエニの「タッチアクションRPG」です。発売時に買ってはいたものの、先日ようやくクリアしました。

なんといいますか、とてもユニークな試みに数多く挑戦しつつも、それでいて完成度の高いゲームでした。素晴らしかったです。世間でどれくらい評価されているのか知らないのですが、個人的にはかなり高評価となりました。

ビジュアル・サウンド・シナリオ・ゲームシステムが「渋谷」というイメージの元に見事に融合しています。特に、ビジュアルデザインは、2Dのコミック調ですが、独特のテイストで一貫しており、ユニークとしか言えません。イベントシーンの絶妙な間と動きは、DS というハードでの魅せる演出の一つの到達点といっていいでしょう。マップも独特のタッチで描かれているものの、見やすさは損なわれておらず、しかも戯画化された中で驚くほど「渋谷っぽさ」を感じました。

シナリオは、メインターゲットがおそらく中高生ということもあってか、「自分と世界」といったかなり思春期向けのテーマでした。しかし、主人公の変化を分かりやすく前向きに描いており、とても好感を持ちました。また、世界設定が適度に複雑な上、細部まで語り尽くさない絶妙な間引き感があり、2周目以降のお楽しみ要素である「シークレットファイル」を手に入れては、ここの伏線はこういう事だったのか!と楽しませてもらっています。伏線好き(?)な人にもお勧めです。

ゲームシステムも「ブランニュータイトルなのでプランナーさんが好き放題頑張りました」といわんばかりのオリジナルなシステムのオンパレードです。バトル周りのシステムが優れているのかどうかは人によって評価は分かれるとは思いますが、独特であるというのは論を待たないでしょう。

「DSの2画面で同時にバトルっすよー。そう、タッチパネルで下画面を操作しながら、ボタンで上画面を操作するんっすよー」という妄想は、多くの企画者の脳裏を一度はよぎったことがあるはずです。しかし、普通は上司に「普通の人間が、同時に2画面操作できるわけないだろ、ボケ!」と一喝されて終わるはずの企画です。それを実際に実装して商品化した根性は素晴らしいものがあります。

まぁ、プレイ後の実際の感想も「やっぱり二画面同時に操作はできません(涙)」だったりはするのですが、2画面同時プレイを試みている時には、なんだか視野が広がって新しい自分へ脱皮できそうな感覚は味わえました(笑)。本来のゲームデザインでは、上下画面を行き来する光球が着目する画面を誘導する役割を持っていたはずですが、とっさの切り替えが難しく、僕には下画面に集中で精一杯でした。ちなみに、上画面は僕の識閾下がボタンをひたすら連打です(笑)。ただ、バトルも難易度を EASY にすれば、グッと難易度が下がりますので、アクションが苦手な方でもまったく問題なくクリアできる事と思います。

市場にはだいぶん流通しているはずですので、安売りしているのを見かけたらぜひ手に取ってみてください。

さて、以下はユニークなシステムのうち、シナリオ部分に関わるところのメモです。

特徴

バッジやファッションなどのバトルシステムまで含めるとユニークなところばかりですので、システムの全容は公式サイトをご覧ください。動画入りの丁寧な説明が見れます。

サイキックスキャニング

RPG では、世界のリアリティを増すために街の人を増やせば増やすほど、彼らのセリフを作る労力がかかるというジレンマがありました。その解決策の一つが、FF12 における、話せる人だけ頭の上にアイコンが付くというシステムだったわけです。また、リアリティ的な側面から考えると、街の人に片っ端から話しかける旅人というのも不自然です。といった話をXenosagaIIIの感想でも書きました。

今作では、これらの問題を、周りの人の思考を読むことが出来る超能力、という形で回避しました。現実世界に干渉できない裏世界にいるという世界観的な要請もあってのシステムではありますが、面白いアプローチです。

渋谷の雑踏を表すたくさんの人通りのなか、スキャンモードに切り替えると、人の動きは止まり、思考がバルーンのように見えるようになります。歩いている人全員の思考が見えるわけではなくて、かなり間引かれているのに、遊んでいて不自然さを感じないのがポイントです。もしも、街の人は8割が話しかけても答えてくれない RPG があったらどういう評判になるか、と比較して考えてみると面白いですね。

なお、このスキャンによって、後述するサイキックインプリンティングで使用するキーワードを得ることもできます。

サイキックインプリンティング

今作では、現実世界の人間に直接干渉できないという設定ですので、情報は基本的に一方通行になります。それを解消するシステムがサイキックインプリンティングです。

何か悩み事がある現実世界の人に対して、脳裏にキーワードを滑り込ませることで、思考を誘導するという仕組みで、これによって現実世界への干渉を行うわけです。

シナリオなど感想

今作は、前述のように、アドベンチャーゲーム的にもユニークなシステムがあります。しかし、残念ながら、作品中ではそれほど活躍することはありませんでした。

基本的にシナリオ的なイベントのボリュームは少なめで、メインシナリオ以外の部分のお遊びはバトルで満足してもらいましょう、という雰囲気の作りとなっています。シナリオ分岐は大きなものはなく、細かい一連のイベントの中で、ちょっといい行動を取るとおまけアイテムが手にはいる、という程度の物でした。

バトルを抜いて、このシステムだけでアドベンチャーゲームを作っても、そこそこ面白い物ができそうなのに、残念でした。

シナリオの内容に関する感想は最初に書いたとおりです。世界設定はひねりまくっていますし、初期状態のネク君の性格もひねまくりなのですが、人物の変化の描写に関しては真っ直ぐ分かりやすいシナリオでした。シナリオと演出の相乗効果で、ラストに「すばらしきこのせかい」のロゴが出た瞬間に思わずグッと来てしまいました。

なお、ゲーム終了後のやり込み要素もふんだんすぎるほど存在しています。各章ごとに指定された条件を全て満たすと閲覧できる「シークレットファイル」も、やり込む動機付けとしては優れています。が、クリアしたのにバッジコンプが33%、アイテムコンプが50%という状況では、いくらやっても終わりそうにないので、このあたりでプレイを止めようと思います……。