PS2「Xenosaga EPISODE III [ツァラトゥストラはかく語りき]」ナムコ

時間が出来たのでなんとかクリアできました。クリア時間は32時間半くらいでした。これでようやく積みゲーを完全消化です。(ドラクエ8とか残ってますけど)

感想その1: ユニークな会話システム

感想ですが、まずは街の人のセリフの表示法が興味深かったですね。従来は「街の人に向かって○ボタンで話しかける」というのが RPG の文法でした。しかし、今作では近づくだけで自動的に吹き出しが表示され、さらにキーワードがハイライトされるので気になったら□ボタンを押して会話に割り込める、という方式が取られています。

確かに、よそ者の主人公が街の人に片っ端から話しかけている姿って、警察の聞き込み以外の何者でもないなぁ、とは前から思っていました。街の人も皆が皆、よくもまぁ真面目に応対してくれるものです。そう考えると、あくまでも街の人の会話を小耳に挟んで、気になる単語があったので話しかける、というこのシステムのほうがより自然ですよね。

ただ、残念なことに、今作では結局街の人が最初から主人公に向かって話しかけてきてしまうので、従来の RPG の不自然さと何も変わりないままでした……。システムの思想が十分に根付かなかったのか、それとも実装してみたら冒険過ぎる肌触りになってしまったので従来路線に軌道修正したのか、どちらかでしょうね。

「街に自然な数の通行人を配置すると人数が多すぎてテキストを用意しきれない」という葛藤は、写実的になればなるほど RPG が抱えることになる問題です。これを、例えば FF12 では「会話できない人」というものを導入することで解消しようとしました。その代わり、FF12 で街を歩くと、会話できる人の上には会話アイコンを出ている、というはなはだゲーム的な解決法になってしまっていたわけです。しかし、もしもこの Xenosaga III のシステムをうまく組み込んだとしたら、もっとうまくやれそうですね。常識的に考えて、通行人の大多数は黙って歩いているのが普通でしょうから、そういう人たちとはすれ違っても吹き出しを出さなければいいわけです。すると、テキスト量の爆発を起こさずに、より自然に、街のグラフィックスの一部としての通行人を置けるようになりそうです。まぁ、そんなシステムにしてしまった結果、井戸端会議をしているおばちゃんたちの後ろで聞き耳を立てて、気になる単語ですかさず会話に割り込む、という主人公もそれはそれで変質者っぽいわけですが……。でも、そんな RPG があったら、それはそれで情報の聞き込みを楽しめそうな気がします。

なお、もしかしたら Xenosaga III の「近くによると吹き出しが出る」という会話システムはこの作品がオリジナルではないかもしれません。情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら教えていただけると助かります。

感想その2: 遠景が綺麗

グラフィックスに関しては、PS2 円熟期というに相応しい、マシンの性能を十全に引き出した美しさだったと思います。FF12 でもリアルタイムレンダリング部分の顔の描写が綺麗だという感じましたが、Xenosaga III もまた違ったアニメーション的な造形のキャラクターでのリアルタイムレンダリングが素晴らしかったですね。通常マップも、かなり大きなエリアを一度に読み込んでシームレスに移動していた割には、その上で動くキャラクターのモデルのポリゴン数をケチっている様子がないのには感心しました。グラフィックスはあまり詳しくないのですが、ローポリ表現を工夫しつつ、かなり頑張ってシーングラフのカリングもしているんでしょうね。マップ切り替えや戦闘時などのロード時間もかなり短いですし、全体的に見てもプログラミングの質は非常に高そうです。

特に僕が感動したのは、遠景の美しさです。それは、例えば南海の小島の青く広がる空と海の風景だったり、青空の下、未来都市を俯瞰する遠景だったりするわけですが、素直に綺麗だと感じました。特に、フィフスエルサレムの公園から見下ろした風景はお気に入りですね。よく、ゲームに登場する「未来都市」って妙にサイバーだったり、妙に薄汚れすぎていたりして、心が荒むようなものが多いのですが、今作では爽やかに描くべき所では、本当に爽やかな気分になれる絵になっているのが嬉しかったです。

このやわらかい感触は、HDR 表現による光の溢れ出しや、ラジオシティ法っぽい(事前にテクスチャに焼きこまれた?)やわらかな陰影表現、それに遠景になるにつれてかすかにかすれていくようなとても弱いフォグ描写などが絡み合ってうまれているのでしょうね。他の会社でも、尖がった「芸術」的な絵ばかりでなく、こういった見てほっとできるようなグラフィック表現をもっとメインにして欲しいものです……。

とはいえ、今作も、大作 RPG のご多分に漏れず、ラストに近づくほど、陰鬱なマップか、異次元チックなわけのわからないマップかのどちらかになっていってしまうわけですが……。そうしないとユーザが盛り上がらないと考えているのかわかりませんが、ラスト付近は異次元風、という妙なお約束もそろそろなんとかならないかと思ったりする今日この頃なのでした。

また、遠景といえば、都市の全体マップの移動画面も非常に精細で綺麗でした。特にフィフスエルサレムの全体マップは、ただの移動画面という枠にはとどまらず、「どこまでも続く大都市」という設定を実感させてくれる絵でした。いままでゲームの中で表現された大都市で、一番大都市さを感じられる表現だったかもしれません。こういった、世界観をしっかり見せてくれるようなグラフィックスはとてもよいですよね。優秀なスタッフがいらっしゃるんだと思います。

感想その3: 全力で風呂敷を畳む

さて、物語のほうですが、今回は Xenosaga 三部作の完結ということで、前2作の全ての伏線の回収と、各キャラクターのストーリーの解決を行う必要があったわけであります。実は若干心配していました。なにせ、突然サウンドノベル化するというサプライズを提供したゼノギアスの DISK2 という前例もありましたし……。しかし、ふたを開けてみれば、きちんと物語はまとまったのではないでしょうか。

前2作はあまりにもお客さんを置いて行きすぎなところがありましたが、今作では、ゲーム本編でも十分に噛み砕いた説明を織り交ぜつつ、なんとかキャラクターの言動に対する理解が付いていく範囲でストーリーは展開していきました。とはいえ、勢力が4つも5つもあるような状況では混乱するなというほうが無理ですので、データベースという機能を入れて世界情報を無理やり補足するというやり方にはなりましたが……。データベースに関しては賛否はあるかと思いますが、無理にゲーム内でだけ情報を出そうとしてわけの分からないままで終わるよりは、ずっとよかったのではないでしょうか。ちなみに、僕のエンタテインメント作品に関する基本スタンスは「受け手に伝わらない物語はただの自己満足である」です。

物語のテーマは、「自分の存在理由」と「未来に生きる」あたりでしょうか。世界設定が凝りすぎで、ついついそちらに意識が持っていかれますが、個々のキャラクターの物語はもっと地に足が着いたものが多く、特に8章〜9章のクライマックスでの各キャラクターの成長の描写はよかったのではないかと思います。アレン君があそこまで見せ場を作るなんて、びっくりしましたが、同時にそのための配置だったかと納得もしました。妙に長いエンディングも含め、キャラクターがそれぞれの信条を持った上で行動しているように描かれていて、とても好感触でした。

やたら伏線が多くて、キャラクターの動機もよく分からないし、けったいな物語やなぁ、というのが Xenosaga の印象だったのですが、EPISODE III をクリアして、とてもすっきりした気分でプレイを終えることができました。ボリュームを求める方には少し物足りないかもしれませんが、短めであっても質は高いのではないかと思います。