DS「ウィッシュルーム 天使の記憶」
アナザーコードに続く CING の DS 第二作「ウィッシュルーム 天使の記憶」をようやくクリアしました。クリア時間が42時間半になっているんですが、そんなに遊んだ自覚はないので、プレイ画面のまま寝てしまっていたのでしょうか。
縦に持って、片方の画面に3Dマップ、タッチできる画面に館内地図というスタイルは、僕には相性がよかったですね。よくあるいまどきのゲームのように3Dだけの画面内で移動するのは、没入感はよいものの、ゲーム内世界を移動することだけ考えると脳に無用な負担がかかっている気がします。今作のように、世界の雰囲気を感じさせるのに 3D を使いつつも、インターフェイスにまで 3D は使わないという切り分けは理にかなったもののように感じました。
3D で描かれた館内を背景に独特の手書きスケッチ風の 2D キャラクターグラフィックが表示されるのですが、これが一昔前のアメリカのひなびたホテルという舞台の雰囲気をよく出しています。全体的にデザインがまとまっていて、ハードボイルドまでは行かなくても半熟卵くらいの空気を味わうことができるでしょう。人情刑事物が好きな人にはおすすめできるのではないかと思います。
一晩という限られた時間に、小さなホテルという限定された空間で起こった複数の人々の物語を綴る、ということで、一応グランドホテル形式の物語、ということになるのでしょうか。まぁ、主人公視点ゲームですので、複数の話をひとつずつシリアルに処理していかないといけないのはご愛嬌ということで。少しずつ、各人の背景が絡んでいくところは(少し物足りないところもありましたが)楽しめるのではないかと思います。
アドベンチャーゲームとして見ても、一本道ながらも、ちょっとしたエンディング分岐はありますし、メインストーリーとは絡まないおまけ要素もあるようで、不可はないのではないでしょうか。要所要所で出てくる各キャラを問い詰めるシーンも(やり直し前提ならともかく)一発でクリアしようと思うと慎重に考えて選択肢を選ばないとゲームオーバーになることもあり、ただのデジタル紙芝居ではありません。コツは、切り込みつつも間違ったことを言わない、なのですがこれがなかなか難しい。踏み込んだことを言おうとすると、相手のそれまでの言動の理解が重要となります。相手の表情も見ながら返事を考える、という感じの駆け引きがあり、適度な難易度で楽しめるかと思います。少しくらいのミスなら話は進むのですが、きっと幸せな後日談は見れないことでしょう……。
また、アイテムを任意の箇所で使用可能なシステムはやっぱりプレイしていて楽しいですね。持っていてはいけないはずの物を、見せてはいけない人にうかつに見せてしまうときちんとゲームオーバーになりますし(笑)。ただ、アイテムの使用用途の自由度はかなり狭く、フラグ立て作業の延長からいまいち抜けきっていない印象は受けました。
気になった点としては、何箇所か次の物語進行フラグに対する誘導がほどんどない場面があったことでしょうか。アドベンチャーゲームの文法が分かっているプレイヤーなら大丈夫なのですが、不慣れでフラグを見失ってしまい、迷い続ける人も出かねないラインだったように思います。ヒントキャラクターが実は配置されていたりしたのでしょうか。ケアがどうなっていたのかが気になります。某所の小麦粉の使用法とか、かなり厳しいと思うのですが……。他にも、カセットテープのたるみを鉛筆で巻き取るという発想は CD 世代の方々には出てこないのではないかと心配してみたり。巻き取る道具を探す前に、指で巻いたらどうよ!とプレイヤーに思わせてしまうのはやはりよくないと思います。進行を止めるためだけに作られた障害というのはプレイヤーにとってはただのストレスになりかねませんので要注意ですよね。ストーリー重視のゲームであると主張するのであれば、障害にはストーリー上の必然性を持たせて欲しいところです。
ストーリーに関して難点を言うならば、やはりなんだかんだ言って、ご都合主義な設定が多すぎる気はあります。一番大事なところはきちんと理由付けがされているとはいえ、まじめに推理をさせようとするのであればもう少し偶然の神様を遠ざけたほうがよいように感じました。また、作風なのだと思いますが、幼い女の子に対するこだわりが強くて、そこに対してはしっかりした描写があるのですが、そこから離れるに従って、なんだかサブストーリーの深さがどんどん浅くなっていく気がしなくもありません。
ということで、やはり結論としても、人情刑事物の雰囲気が好きな方にはおすすめ、ということになるのでしょうか。値段相応に楽しめましたので、次回作にも期待しています。
あ、そうそう、おすすめ先としては、渋めっぽいけど、実はかわいいところもある男性キャラが好きな方にもいいかもしれません。晩御飯のときのカイルの表情は要チェックです!(笑)