PSP「アナタヲユルサナイ」AQインタラクティブ

アナタヲユルサナイ

クリアは少し前にしていたものの、時間が無くて書けなかった感想を急いでメモしておきます。

PSP を縦持ちにするという斬新さが話題になったアドベンチャーゲームです。プロモーションではスタッフについてもずいぶんプッシュしていたようですが、正直、どこまで開発に関わっていたのかは分かりませんよね(苦笑)。シニアプロデュースとか、音楽プロデュースといった怪しい役職名は、仕事の実体も怪しく感じさせてしまいます。とはいえ、それらの方々の名前を冠するだけの存在感はあるタイトルだったのではないでしょうか。

パッケージからも分かりますが、物語の内容も OL 向けという印象を受けました。人間の内面や男女の機微に焦点を当ててストーリー展開されていくのは、まさに女性向けですよね。しかし、そうした中でも探偵の活動を通じて、闇社会との遭遇があったりと、探偵ものとしてのポイントも押さえています。特にラスト付近の緊迫感はかなりのもの。……と、考えてみると、メインターゲットは「探偵好きな OL」となりまして、PSP の所有層も勘案すると、なかなか売りにくい商品でもあるかもしれませんね(^^;

アドベンチャーゲームとしては、会話の最中に相手の表情や服装を観察して話に割り込むことができる、というなかなか面白いシステムが採用されています。しかし、探偵をしているという雰囲気作りに活用しているだけで、ゲーム性を上げる方向には使わないという選択をしたようですね。普通にプレイすれば、ほぼゲームオーバーになることはないでしょう。

ゲームではあまり見かけない男女の機微みたいな話が好きで、かつ探偵ストーリーがお好きであれば、オススメできるのではないかと思われます。

特徴

PSP縦持ち

PSPを縦持ちするのは、シューティングゲームで先行例はありますが、文章を読むタイプのゲームでは初めてではないでしょうか。「注目」では、全身を舐めるように見ていくことになりますので、縦長の画面に全身がすっぽり入るスタイルとは相性がとてもよかったと思います。

ただ、普通に文章を読むだけであれば、やはり横持ちのほうが持ち方も自然になりますし、疲れない気もしました(^^;縦持ちだと通常操作のためのボタンが足りなくなるため、十字ボタンがコマンドに割り当たってしまっているのも最初は混乱しました。メニューの上下だけでも十字ボタンでできるとよかったんですが。

「注目」システム

会話パートの途中で、マークが出たタイミングでアナログパッドを動かすと「注目」モードに移行します。「注目」では、会話相手の全身を注目することになります。注目する場所によって、情報が読み取れたり、そこから話題を引き出して新しい会話を始めることができます。注目しないままに会話を進めることも可能ですが、その場合ループしてしまう場合もしばしば。

機能としては選択肢と変わりないのですが、自分で見つけた感を与えるよいシステムではないでしょうか。

ただ、今作ではいくつかデモ程度に「逆転裁判」ばりに見抜かないといけない箇所もあるものの、あとはわりと何を選んでも全体に影響がない選択ばかりでした。ターゲットとして、アドベンチャーゲームに強くない人を想定しているからでしょうね。それでも、探偵としての雰囲気作りには役に立っていたと思います。

ゲームシステム

基本的にはノベルタイプのゲームですが、一部のストーリーでは、移動先選択もあります。ただ、場所オリエンテッドなシナリオ構造をしているというよりは、ノベルゲームの選択肢の一形態と考えた方がよいでしょう。

今作では、露骨な選択肢という形ではなく、「注目」での選択/カーナビでの移動先選択/行動の2択(イラスト付き) といった形で、柔らかく選択肢を提示しているのも特徴と言えるかもしれません。

証拠を集めて推理するといった複雑な仕様はありません。読み進めていくと、犯人を推理する選択肢が登場しますので、それを選んでいくことになります。

シナリオ構造

いくつかの episode で構成されており、各 episode は chapter に区切られています。

場所選択で多少のシナリオの前後は発生するものの、基本的にはメインストーリーは一本道のシナリオ(のはず)です。バッドエンド行きの選択肢を選ぶと直行します。犯人推理で間違えると、なんともやりきれない感じのバッドエンドになりますが、きちんと丁寧に作ってありますね。また、いくつかお遊びのバッドエンドも用意されており、特定のシーンでかなり限られた場所を「注目」すると、超展開に突入したりもします。

また、クリアすることで、おまけのコンテンツがトップメニューに追加されます。

本筋が一本道のシナリオとしては、遊び心が入ったシナリオ構造と言えるのではないでしょうか。

ストーリーへの感想など

あまり期待せずに買ってきたのですが、十分に楽しめました。各話ともに男女の(綺麗に割り切れない)関係が重要な要素となるシナリオでしたので、あまり自分にとっては得意な分野ではなかったのですが、どろどろすぎず、探偵要素も豊富で、男性がプレイしても面白いシナリオではないでしょうか。

終わり方に関しては……うーん。多くの女性は好きなのかもしれませんが、僕には残念でした。また、ラスト付近は十分にスリリングなのですが、ちょっとだけ不完全燃焼な気分も。とはいえ、現実の延長としての物語としては、十分にドラマチックだったのではないかと思います。

ちなみに、音楽に関しましてですが、FFっぽさを期待すると、肩すかしを喰らってしまいそうです。あまり期待しすぎないようにされたほうがよろしいかと。音楽自体はゲームにあっていていいものではありました。