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Win「スマガ」Nitro+

ゲーム

スマガ 1 (ガガガ文庫)

昨日、急に Steins;Gate の感想を書こうと思い立ったのは、この「スマガ」をプレイしたからでした。

シナリオライターは下倉バイオ氏。Steins;Gate のシナリオ構成協力として、主に後半のタイムリープ部のアイデア出しに関わっている方でもあります。この「スマガ」も、Steins;Gateと並び、近年のループもののゲームへの言及では必ず顔を出すタイトルです。

2008年発売ですから、もう3年近く前のタイトルとなります。近頃 PC ゲームへほとんどアンテナを張っていなかったので、すっかりプレイし損ねていましたが、シュタゲ周辺で何度か言及を見かけたのを機にプレイしてみました。Nitro+ の若手中心で制作したタイトルだそうで、小説やコミックスなどのメディアミックスも盛んに行われていたようです。(画像は小説の表紙)

以下、ネタバレ盛りだくさん。

特徴

本作の一番の特徴は「人生リベンジアドベンチャー」という副題の通り、主人公がバッドエンドへ行き着く度に、「神様」の力を借りて人生をリベンジする(時間を巻き戻って生き返る)という設定です。

ただ、幾つかの制約が設定されており、プレイが進むごとにプレイヤーに提示されます。最初から適用されているルールとしては2点。まず、最後に意識を取り戻したところからしかリベンジできない。そして、未来を変えうる選択可能性があるポイントに来ないと前のループの記憶を取り戻せない。この2点の制約により、ループする単位を1日以下に限定して、ループものでありながら日々が徐々に進んでいくというシナリオを可能にし、また、分岐点までのテキストは完全に同一にしてOKという省コスト化に寄与しています。

また、野放図に生き返れると緊張感が薄れることを嫌ってか、途中の盛り上がりの部分では、生き返れる残り回数に制約がかけられ、残り回数0になると一段階上のバッドエンドになる、といった仕掛けも織り込まれていました。

ここで一段階上のバッドエンドと書きましたが、本作ではやり直しに3段階あるのも面白いところです。まず、最後に意識を取り戻したところから繰り返すリベンジ。そして、そうやってある物語の終わりまで行った際に、次の物語のために記憶を引き継いで最初からやり直すリベンジ。最後に、致命的な選択ミスでの生き返れないバッドエンドや、1回目のハッピーエンド後に起こる、主人公の記憶が引き継がれない再スタート、の3つです。

ここまで書けば、シナリオの任意の場所に戻って試行錯誤を繰り返す「YU-NO」タイプのループものゲームとはまったく異なるシステムであることがおわかりになるかと思います。今作の、主人公の記憶が継続したリベンジは、設定としては日付が戻っているものの、実際はとても長いシナリオが徐々に前に進んで行っているに過ぎません。

ただし、プレイヤー体験としては、同じ日を繰り返し体験しながら、違う選択をすることで前に進んでいるように感じさせるようになっています。失敗が起こる時は必ずきっかけとなる選択肢を選ばせており(どちらを選んでも失敗するが、一度しか通らないプレイヤーは気づかない)、次の周ではそこで違う選択肢を主人公が選ぶことで先に進んだように演出されます。これは、総当たりが流行らなくなった今時のADVにおいて、選択肢を試行錯誤して先に進んだ感覚を、一番いい試行錯誤のさじ加減で疑似体験させる巧妙なテクニックです。

また、記憶が継続しない再スタートは、他のゲームにおけるゲームオーバーからの再スタートと非常に近しく感じられますが、ここにも一つ仕掛けがあります。スマガの有名な仕様ですが、初回プレイで、主人公の記憶が継続している間のみ、主人公のボイスが再生されない、という仕様になっています。一度でも生き返れないバッドエンドを迎えるか、1回目のハッピーエンドを迎えると、次の再スタートから主人公ボイスが再生されはじめます。これは、初回プレイはプレイヤー自身の体験であり、2回目以降は神の視点で新しい主人公の物語を眺めているということを示しています(と私は理解しています)。

だいぶん根っこの部分のネタバレになりますが、スマガの世界は、物語の観賞者である「神様」と、物語を紡ぐ伊都夏市の住人という構造になっています。そして、記憶の継続しない再スタート時には、それまでの主人公は「神様」側へシフトアップして、何も知らない主人公のコピーがまた伊都夏市にドロップします。この「神様」は(おそらく)プレイヤー自身の暗喩でもあり、ハッピーエンド後の再スタートでは、「神様」となった主人公(≒ハッピーエンドを知ったプレイヤー)が、何も知らない主人公にアドバイスすることで、トゥルーエンドへの道が開かれることになります。

このように、ループの主人公の試行錯誤を、うまく選択肢を表示することでプレイヤーが試行錯誤したかのように感じさせること。そして、プレイヤーの持つ神の視点を、実際に物語を鑑賞する「神様」という存在を導入することでメタなレベルでゲーム内に取り込んだことで、スマガは非常に面白いプレイ体験を与えるゲームとなっています。

シナリオ構成

前項で述べたとおり、ループものといいながらも、シナリオとしての実態は、同じ日を繰り返しながら徐々に前に進んでいくという後戻りのない構造となっています。ただし、意味ありげな選択肢が適度に表示され、また非常にボリュームが多いため、一本道だと感じることはあまりないでしょう。

一回目のハッピーエンド後は、本当に最初からやり直す形となり、新規に増えた選択肢によって、トゥルーエンドへ分岐するという構造です。また、一回目のハッピーエンド後に分岐可能な、トゥルーエンドには必須ではないサブヒロインの個別シナリオが幾つか存在しています。

シナリオの大分岐以外は、最終的には一本道ですが、一部、分かりにくい複数の選択肢がフラグとなり、追加シーンが見れる場所があります。CGをコンプリートしたいユーザだけが選択肢の試行錯誤を頑張ればよい、というバランス調整かと思われます。

全般的な感想

コマンド選択型のアドベンチャーゲームがほぼ衰退している中で、時間をループしながら試行錯誤していくというプレイ感をどう出していけるか、というチャレンジとして非常に面白い作品だったと思います。

また、何度も生き返れるという設定は万能に思えるものの、その設定をうまく使った話作りをしています。余計なことを知っている事によって発生する苦悩を様々な角度から描いており、また、生き返れるという設定にも制約を加えていくことでドラマを作っています。さらに、同じ時間を繰り返しているはずなのになぜか一定しないというところで、「原器」という設定に絡んだ謎解きを行うなど、設定(ゲームシステム)と物語とが絡み合ってゲームを作り上げているところも大きな魅力です。

ただ、魔女や「神様」が出てくるところから分かるとおり、緻密な SF ではなく、ファンタジーの色合いが濃い作品です。時間ループものというと SF を期待する人が多いと思いますが、そう思ってプレイすると、細かい設定の整合性で気になってしまい、なんだかすっきりしないかもしれません。そこは、何となくの雰囲気で納得することが求められます。

ちなみに、ファンディスクという扱いで「スマガスペシャル」という続編も出ていますが、本編でフォローしきれなかったエピソードが網羅されている、プレイ時間10時間超の充実の一作です。システムとしては、「Fate/hollow ataraxia」とほぼ同じ、といえばいいんでしょうか……。同じ日を繰り返すのですが、キーワードを思い出していくと、登場人物が増え、さらに新しいエピソードが見れるようになる、というシステムです。ショートストーリーをたくさん入れ込むには便利な形式なのでしょうね。

さて、「スマガ」をまとめますと、「YU-NO」ほど硬派なシステムではないものの、「Steins;Gate」のように1本道でもない、ループのほどよい体験をプレイヤーに与えてくれる作品、と言えるかと思います。また、選択肢総当たりを強制せずに、選択による没入感をうまく提供するという意味では、今時のアドベンチャーゲームの代表例でもあるでしょう。シナリオも純愛路線で、キレイな Nitro+ を堪能させて戴きました。