PS2「Fate/stay night [Realta Nua]」角川書店/TYPE-MOON
これまた、時間が無くて書けていなかった感想を。
PC版からの差分はボイスが付いただけとは思いつつも、以前からもう一度頭からお尻まで読み直したかったタイトルでしたので、迷わず購入しました。フルコンプまでのプレイ時間は58時間30分。2回目なので短くなった……のでしょうか。
PS2版をプレイして
一番最初の感想は、プレイしてよかった、でしょうか。今回の移植でのシナリオ差分は本編全体の規模からすれば微々たる量でははあるものの、Realta Nua の追加は、心の底にしこりを残していたセイバーファンにとっては大きな意味を持っているでしょう。TYPE-MOON の最後の Fate に際し、このシナリオを追加してくれたことに感謝を。
また、ボイスが入ったことにより、キャラクターの説得力がぐっと増しているのも、よかったですね。アニメで慣れたということもありますが、各キャラクターともイメージにあったキャスティングで、演技に関しても違和感はありませんでした。特に藤村大河役の伊藤美紀さんのタイガー道場をはじめとしたコミカルシーンでの演技はさすがで、Fate における緊張緩和剤としての大河の機能を十分に引き出していました。
しかし、まぁ、これだけの分量のボイスの収録は尋常ではない苦労だったでしょう……。ただ、いくらたいへんだったろうとは言え、蛭を「かえる」と読んでみたり、そもそも声を当てるキャラが間違っていたりするところがあるにも関わらず、そのまま商品化されてしまっているという品質管理の弱さは少々いただけません。ある程度の本数が出ることは分かっているタイトルなのですし、細かい修正用にもう一回録るくらいのこだわりは持って欲しかったところですが、いろいろ大人の事情があったのでしょうか。
シナリオ構造など
シナリオ構造をメモしておきますと、クリアするごとに新たなルートが開かれる形のシナリオで、メインとなるルートは計3種類。それにPS2移植で加えられたショートシナリオが最後に加わる形です。各ルートは基本的には一本道ですが、それがひたすらボリュームがあるのが最大の特徴といえるでしょう。選択肢による細かい分岐はそれなりの数設定されており、間違えると即デッドエンドになる箇所が多数。また、好感度パラメータによる分岐およびミドルレンジの選択肢影響が所々にあります。
システム的にはそれほど特殊なものはありませんが、あえて挙げれば、バッドエンドの種類ごとにスタンプを押してもらえる、という収集要素があります。おぉ、そうでした。ゲーム内に登場するキャラクターやアイテムなどのデータベースが存在し、ゲームの進行に応じてデータが更新されていく、という仕様もありました。地味な要素ではありますが、作成およびデバッグはたいへんそうです……。
なお、スクリプトエンジンとして吉里吉里を使っているというのは有名な話です。
シナリオに対する感想
PC 版をクリアした際の感想が残っていないので、2回目のプレイで感じた感想を。例によってネタバレ満載です。
各シーンでの状況を理解した上での再プレイは、キャラクターの内面の理解が追いつくため、より深く楽しむことができました。逆に言えば、初回プレイでは理解が難しいシナリオだったということでもありますが。特に、各々がそれぞれのあり方に対して、何を間違っていると感じているのか、というキャラクターの動機を理解する上で非常に重要な部分が、2回目のプレイでようやく分かってきたように思います。
特に Fate ではそれぞれがそれぞれの立場で「お前は間違っている!」と糾弾しますし、その立場もシナリオの進行によって変わってきたりしますので、作品としては非常に面白いものの、万人にとって理解がやさしいタイトルではないですよね……。
イリヤと言峰と切嗣に関しては Fate/Zero での情報補完がかなり効く部分もありますので、1セットの作品として楽しむと、また Fate 本編での感じ方も変わってきますね。
作品のテーマと自分が感じたものは、「一生を誇るための在り方」「ヒーローとは何か」。憧れや義務感による借り物の在り方と、自らの心から零れ出た在り方では、その在り方によって自分に返ってくる価値が全く異なるという話と、最初は借り物であろうとも、そこに真に価値があると信じ、貫き通せればそれは自らの誇りとなるという話が主軸だったように感じます。結局の所、エミヤシロウが最初から最後まで主役の話でした。
なにはともあれ、たいへん満足いたしました。